法医解剖従事者のSARS-CoV2をはじめとする感染防御に関する日本法医学会の見解

死体検案・法医解剖に従事する医師や技術職員は、新型コロナウイルスをはじめあらゆる感染症への感染リスクに曝されている状況にある。死体解剖時には外科手術等と同様、感染病巣に触れたり病原微生物等の飛散が生じることがあるところ、細菌はもとより、ウイルスについても宿主の死後もしばらくは感染性ないし病原性を保っていることが指摘されており、過去にも解剖により結核などに感染した事例が報告されている。死体検案・法医解剖による死因等の究明は、人に対する最期の医行為であるとともに、その結果得られるであろう知見が、感染症を始めとする傷病への理解を深め、予防および治療に貢献する公益性の高い事業である。そのような業務をなす立場にあることに鑑みると、従事者個々人が感染予防に尽力することはもとより、法医解剖施設への感染防御設備の整備や従事する医師や技術職員に対するワクチンの早期接種などあらゆる感染予防策が優先的に考慮されなければならない。

令和3年3月4日