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B. ガスクロマトグラフィー (GC),GC・質量分析法 (GC/MS)
(1)中性・酸性および塩基性薬毒物(固相抽出)

 i)前処理

試料1) 1 ml(g)
↓ 0.1 M リン酸緩衝液2) 3 mlを加え、混和する.
Bond Elut Certify カートリッジカラム3) (300 mg,Varian)
↓ i)0.1 M リン酸緩衝液2) 3 mlおよび1M 酢酸 1 mlで順次カラムを洗浄する.
ii)窒素ガスを2分間流し,カラムを乾燥する.
iii)ジクロロメタン 4 mlで溶出する.
中性・酸性物質
↓
↓
↓
↓ i)中性・酸性物質溶出後のカラムをメタノール 3 mlで洗浄する.
ii)窒素ガスを2分間流し,カラムを乾燥させる.
iii)ジクロロメタン/イソプロパノール/濃アンモニア水(78:20:2 v/v/v)3 mlで溶出する.
塩基性物質
↓ 窒素気流下,各溶出液の溶媒を留去する.
残渣(中性・酸性物質および塩基性物質)
↓ 酢酸エチル 20 μlに溶かし,その1 μlを注入する.
GC-NPDあるいはGC/MS

 【注 解】
1) 試料は血清,血液,尿,胃内容上清あるいは組織ホモジネートの上清.ある種の血液は目詰まりを起こすことがあるので,遠心分離し,上清を用いることを奨める.
2) 0.1 M リン酸緩衝液 (pH 6.0):KH2PO4 2.72 gを水200 mlに溶かし,1M-KOH液を加えてpH 6.0に調整する.
3) 0.1 M リン酸緩衝液 (pH 6.0):KH2PO4 2.72 gを水200 mlに溶かし,1M-KOH液を加えてpH 6.0に調整する.

 ii)GC-NPDおよびGC/MSの操作法および条件
GC-NPDおよびGC/MS の操作法は各機器の取扱説明書を参照.

GC-NPD の条件

装置: ガスクロマトグラフ
検出器: 窒素リン検出器(NPD)
カラム: DB-5ms,30 m×0.25 mm i.d., 膜厚 0.25 μm
温度:
カラム 80 ℃ (1 min,スプリットレス) -( 15 ℃/min) - 290 ℃ (15 min);注入口 250 ℃; 検出器 300 ℃
キャリアガス: ヘリウム 1 ml/min
メイクアップガス: 40 ml/min
測定時間: 30 min


GC/MS の条件

装置: ガスクロマトグラフ/質量分析計
カラム: DB-5ms,30 m×0.25 mm i.d., 膜厚 0.25 μm
温度: カラム 80 ℃ (1 min,スプリットレス) -( 15 ℃/min) - 300 ℃ (10 min);
注入口 250 ℃; インターフェース・イオン源 260℃
キャリアガス: ヘリウム 1.5 ml/min
イオン化: EI(電子衝撃) 70 eV
測定: 質量範囲 m/z 50-650; 時間 20 min


 iii)コメント
 法医中毒学の対象となる薬毒物は THC (tetrahydrocannabinol) のような窒素原子を含まない一部の化合物を除いて,殆どの化合物は窒素 (あるいはリン) 原子を含むので,それらを含まない化合物 (例えば脂肪酸)の妨害を殆ど受けずに,GC-NPD によって高感度で検出できる.したがって,検体試料の GC-NPD クロマトグラムパターンをブランク試料のクロマトグラムパターン (血液試料では一般に,ニコチンアミド,ニコチン,カフェインなどのピークが観察される) と比較してプレ・スクリーニングが可能である.すなわち,未知ピークの保持時間を同一条件で測定した幾つかの標準物質のピークの保持時間および文献中の保持指標 (retention indices) 順に化合物名を記載した表とを比較して幾つかの候補薬毒物をピックアップすることである.ついで,候補薬毒物の標準物質を検体試料と同一条件で測定し,各ピークの保持時間を精査して同定する.あるいは GC/MS で測定したTIC (total ion chromatogram) の未知ピークのマススペクトルを機器に内蔵のマススペクトルデータベースを用いて,該当する化合物を検索する.ついで,ヒットした化合物の標準物質を検体試料と同一条件で測定し,保持時間とマススペクトルの一致を確認する.
 GC/MS ではスクリーニングと確認が同時に達成できるが,GC-NPD を用いたスクリーニングでは別途に確認検査が必要である.

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