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B.その他の向精神薬
(2) ガスクロマトグラフィー・質量分析法(GC/MS)

 i)液-液抽出

試料1) 1 ml(g)
↓ i) 蒸留水5 ml,NaHCO3約2 gおよびジクロロメタン10 mlを加えて振盪する.
ii) 25,00 rpmで10分間遠心する.
ジクロロメタン層
↓ i) 水層にジクロロメタン10 mlを加え,振盪する.
ii) 2,500 rpmで10分間遠心する.
ジクロロメタン層
↓ ジクロロメタン層を合わせ,無水Na2SO4を加えて乾燥する.
乾燥ジクロロメタン層
↓ 溶媒を留去する.
残渣
↓ tert-ブチルメチルエーテル2)100 μlに溶解し,1 μlを注入する.
GC/MS

 【注 解】
1) 試料は血液あるいは尿.
2) tert-ブチルメチルエーテル (東京化成)はジエチルエーテルより沸点が高く,過酸化水素等も含まれないので使い易いが高価である.ジクロロメタン等の溶媒で代用可能.
3) III. スクリーニング 1. 多種薬毒物(群)C. GC,GC/MS (2) 塩基性薬毒物(液-液抽出)の前処理はGC/MSで分析するのであれば,向精神薬の確認試験法としても有用である.

 ii)固相抽出

試料1) 1.0 ml
↓ アプライする.
Bond Elute Certify カートリッジカラム2)(300 mg,Varian)
↓ i) 0.1 M リン酸緩衝液(pH 6.0)3) 3 mlおよび1 M 酢酸 1 mlで洗浄する.
ii) カラムを5分間乾燥後,メタノール3 mlで洗浄する.
iii) カラムを2分間乾燥後,ジクロロメタン/イソプロパノール/濃アンモニア水
4) 3 mlで溶出する.
溶出液
↓ 窒素気流下,溶媒を留去する.
残渣
↓ 酢酸エチル20 μlに溶解し,その1 μlを注入する.
GC/MS

 【注 解】
1) 血清,血液,尿,胃内容上清,組織ホモジネート上清.全血は目詰まりを起こすことがあるので,遠心分離することが望ましい.
2) 予め,メタノール 2 ml,水2 ml,0.1 M リン酸緩衝液 (pH 6.0) 2 mlを順次流してカラムを活性化する.疎水性基と陽イオン交換基の両方を結合した固定相を充填した類似の市販カートリッジカラムも使用できる.Bond Elut Certifyカラムは乾燥の行程以外では乾燥させないように注意する.
3) KH2PO4 2.72 gを水200 mlに溶かし,1N KOH液(KOH 5.6 gに水を加えて100 mlとする.室温で3ヶ月安定)でpH 6.0に調整する.5℃で30日間安定.
4) ジクロロメタン/イソプロパノール/濃アンモニア水を39:10:1 (v/v/v) の割合に混合したもの.

 iii)GC/MSの条件


装置:
カラム:
温度:

キャリアガス:
イオン化:
測定:
ガスクロマトグラフ/質量分析計
Ultra-2,15 m×0.2 mm i.d., 膜厚 0.33 μm
カラム 60℃(1 min,スプリットレス)-(20℃/min)-280℃ (10 min);注入部 250℃; イオン源 280℃
ヘリウム 圧力 6 psi(約1 ml/min)
EI(電子衝撃) 70 eV
質量範囲 m/z 50-550; 時間 22分


 【注 解】
1) カラムは,ULTRA-2と同等品でもよい.
2) フェノチアジン系薬物,三環系抗うつ薬はd5-diazepamを内部標準にして分析すると0.1-5.0 μg/mlの範囲で直線性がある.ブチロフェノン系精神作用薬は0.1 μg/ml以下の濃度では測定できない.

 表1.代表的な向精神薬の保持時間および検出下限1)

化 合 物 保持時間(分) 検出限界(μg/ml) 主なイオン(m/z)

 Desipramine 10.9 0.02 234, 195, 208
 Clomipramine 12.1 0.05 58, 85, 269
 Imipramine 10.8 0.02 58, 235, 85
 Nortriptyline 10.7 0.05 202, 220, 189
 Amitriptyline 10.6 0.02 58, 202, 215
 Promethazine 11.2 0.02 72, 268, 283
 Chlorpromazine 12.9 0.02 58, 318, 89
 Levomepromazine 13.1 0.02 58,328, 228
 Haloperidol 19.4 0.1 224, 237, 123
 Caffeine 8.7 0.02 194, 109, 82
 Nicotine 7.3 0.02 84,162, 133
 Cotinine 9.5 0.02 98, 178, 118


 【文 献】
1. 仁平 信,林田眞喜子 他.機器・試薬 1997;20:519-525.

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