日本法医学会
FTWGトップページ
法医中毒学ガイドライン小委員会
 ・薬毒物検査のための手引き
 ・法医中毒学研究室ガイドライン
薬毒物検査マニュアル小委員会
 ・薬毒物検査マニュアル
  I.総論
  II.スクリーニング
  III.各論
4.催眠薬
A.バルビツール酸
(1) 高速液体クロマトグラフィー (HPLC)
薬毒物標準品小委員会
 ・薬毒物標準品に関する情報
 ・規制薬物の取り扱いガイド
法医中毒学ホームページ小委員会

日本法中毒学会 ホームページ
日本中毒学会 ホームページ
関連リンク
A.バルビツール酸
(1)高速液体クロマトグラフィー (HPLC)

 i)前処理

試料1) 0.5 ml
↓ i) 内部標準液2) 50 μl,水 0.5 ml,0.2M 酢酸/酢酸ナトリウム緩衝液
 (pH 6.0)3) 0.1 mlおよび酢酸エチル/エーテル(1:1,v/v) 3 mlを加える.
ii) 2分間撹拌後,遠心分離(800 gで5分間)する.
有機層
↓ スピッツ管に移し,窒素ガス気流で溶媒を留去する.
残渣
↓ 移動相100 μlを加えて溶かし,その10 μlを注入する.
HPLC

 【注 解】
1) 試料は血液,尿など.臓器は,細切りした組織 1 gに水 4 ml を加え,ホモジナイズし,遠心分離 (12,000 g で10分間) し,上清 1 ml を取り,液体試料の測定法と同様に操作する.
2) 内部標準液は 5-(4-メチルフェニル)-5-フェニルヒダントインをメタノールに溶かし,10 μg/ml の溶液とする.
3) 酢酸ナトリウムの16.41 g/l 水溶液を調製し,0.1N 酢酸でpHを 6.0に調整する.
4) 検量線は各催眠薬をメタノールに溶かし,10 μg/ml の濃度にする.このメタノール溶液(例えば 10,25,50,100,500,1000 μl)を取り,窒素ガスで溶媒を留去し,残渣に血清 0.5 ml を加えたものを用いる.

 ii)HPLCの条件


装置:
検出器:
カラム:
カラム温度:
移動相:
流速:
測定:
高速液体クロマトグラフ
紫外可視検出器
ODS-80Ts1), 10 cm×4.6 mm i.d. 粒径 2 μm2)
室温
アセトニトリル/8 mM リン酸(3:7, v/v)3)
0.4 ml/min
波長 215 nm; 時間 25 min


 【注 解】
1) カラムはZorbax ODS,Hypersil ODSなどのODS (オクタデシルシラン系シリカゲル) 同等品で代替できるが,保持時間が異なってくる.
2) 粒径5 μmの充填剤が一般によく用いられるが,この場合は保持時間が長くなるので注意.
3) KH2PO4(リン酸二水素カリウム,99%)770 mgを700 mlの水に溶かした後,アセトニトリル300 mlを加えて1,000 mlにする.
4) 試験液10 μl を高速液体クロマトグラフに注入し,得られたクロマトグラムを標準液のそれと比較し,標準液から作成した検量線によって定量を行う.定量範囲は 0.1-5 μg/ml である.
5) 催眠薬の保持時間および検出限界を表1に示す.また,血液からの回収率はすべて95-104 % の範囲にある.本法による尿分析では,保持時間10分位までは尿成分の妨害ピークが出現するので,保持時間の短い薬物は分析できないことがある.定量範囲は0.1–5 μg/mlである.
6) 本法ではpentobarbital,hexobarbital,amobarbitalのピークはほぼ重なるので注意.

 表1.主なバルビツール酸系催眠薬の保持時間および検出限界

化合物 保持時間(分) 検出限界(μg/ml)

 Barbital 3.8 0.05
 Allobarbital 5.1 0.05
 Metharbital 5.9 0.05
 Phenobarbital 6.1 0.05
 Pentobarbital 7.1 0.05
 Cyclobarbital 10.6 0.05
 Hexobarbital 10.6 0.05
 Amobarbital 10.9 0.05
 Secobarbital 14.2 0.05
 Thiopental 21.8 0.5


 【文 献】
1. Tanaka E et al. Forensic Sci Int 1997;85:73-82.

Copyright(c) 2009 日本法医学会 法医中毒学ワーキンググループ All rights reserved