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試料は唯一無二であるので,その取扱いには細心の注意を払わなければならない.特に,試料の同一性 (試料が確かに当該人物のものであること) の確認,試料の完全さ
(試料の採取・受渡・保存が確実かつ適正に行われ,試料の分解や改竄がないこと) およびセキュリティの確保に留意する. |
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(1) |
剖検試料 |
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試料採取にあたっては,以下の事項に留意する. |
a) |
採取試料および採取量 |
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試料は再分析 (counter analysis) のため,二分して採取することを勧める.採取した試料は一般に,直ちに分析に供するもの以外は冷凍保存するので*1,二分した試料をさらに小分けする (一回の分析に使用する量) ことを勧める.採取量は以下の量を目安にする (でき得る限り多様な試料の採取が望ましいが,4)〜11)は状況に応じて採取することでもよい). |
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1) 血液 20 ml(g)×2 |
2) 尿 20 ml×2 |
3) 胃内容 20ml(g)×2 |
4) 脳 10-20 g×2 |
5) 肝臓 10-20 g×2 |
6) 肺臓 10-20 g×2 |
7) 脾臓 10-20 g×2 |
8) 腎臓 10-20 g×2 |
9) 筋肉 10-20 g×2 |
10)脂肪 10-20 g×2 |
11) その他(毛髪:50 mg;硝子液:全量;胆汁:全量) |
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b) |
採取した試料はそれぞれ個別の容器*2 に入れ,あるいは個別に包装し,それぞれに付票を貼る.付票には試料名,試料提供者名 (あるいは試料番号),採取日時,採取責任者名などを記入する.各試料は1つあるいは2つにまとめ,安全な場所に保管する. |
c) |
同時に,試料提供者名 (あるいは試料番号),試料名,採取量,採取日時,採取責任者名,保管場所などを検査試料原簿 (各機関の分析責任者が作成する)
に記載する. |
d) |
結核,肝炎,HIVなど感染性の高い疾患の可能性のある試料は,それがはっきり分かる分類をして保管する. |
*1 |
ガス体の分析が必要な場合は,溶存していたガスが凍結により気相中に排出され,開栓時に揮散するので,試料採取後直ちに,分析容器 (注射器等で直接気相を採取できるテフロン栓あるいはライナーなどで密栓する)
に一定量宛分取し,でき得る限り速やかに分析する. |
*2 |
凍結保存 (通常-20℃) 中に破損しないことが肝要であり,テフロンパッキン・ネジ口栓付きガラス製容器が最適である.プラスチック容器およびゴム栓は無極性薬物を吸着するので,それらの存在が予想されるときは避ける. |
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(2) |
受託試料 |
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受託試料は分析者が直接採取に関与しないので,試料の採取について委託者に以下のことを指示する. |
a) |
試料の種類 (血液,尿など) と必要量 |
b) |
試料容器の類型および必要ならば,体液に添加する防腐剤などの種類と量 |
c) |
試料の同一性を示す符号付け |
d) |
包装と輸送方法 |
e) |
結核,肝炎,HIVなど感染性の高い病気の可能性の有無 |
f) |
分析依頼書に記載する内容 [試料提供者名 (あるいは試料番号),試料名,採取量,採取日時,採取場所,採取責任者名,その他の試料に関する情報] |
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試料を受け取る際は,直ちに依頼書と照らし合わせて個々の試料をチェックする.依頼書と異なる試料や完全さが損なわれた試料がある場合は受け取りを断るべきであろう.以下剖検試料の項
(1頁) の c) およびd) に続く. |
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(3) |
取扱い・保存・破棄 |
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試料の取扱いにあたっては,以下の事項に留意する. |
a) |
検査のために試料を使用するときは,使用日時,使用量,使用目的,使用者名などを検査試料原簿に記載する.また,試料の保管場所を移動したときも検査試料原簿に記載する. |
b) |
試料の解凍等による当該薬毒物の分解を極力避け,使用する器具,容器等によるコンタミネーションに留意する. |
c) |
検査終了後,試料は再分析などに備えて可能な限り長期間保存することを勧める.やむを得ず廃棄するときは,必ず,検査試料原簿に記載する. |
d) |
試料の廃棄はそれが遺体の一部であり,かつ医療用廃棄物でもあることを考慮して,適切な方法をとる. |