法医学会の活動についてのプレスリリース

報道関係者各位

平成23年4月6日

日本法医学会災害時死体検案支援対策本部
本部長   中園 一郎
副本部長  青木 康博
久保 真一
岩瀬博太郎

日本法医学会の検案支援活動についてのご報告

 この度の東日本大震災において、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたしますとともに、被災された皆さまにお見舞い申し上げます。

 日本法医学会が実施してきたこれまでの支援活動及び今後の課題などについて、報道諸機関に公表させていただきます。

 詳細は「東北・関東大震災に係る災害時死体検案支援事業についてPDF 14KB)」にありますように、法医学会としては、地震のあった当日から警察庁より連絡を受け、3月12日には対策本部を立ち上げ、3月13日より、被災地に検案に関わる医師及び歯科医の派遣を続けております。4月5日現在までに、法医学会として派遣した医師は87名、歯科医師は19名です。

 今回の派遣は阪神大震災の後、法医学会で作成した「大規模災害・事故時の支援体制に関する提言PDF 1,409KB)」に従って派遣されております。このような派遣は法医学会として初めての経験となります。法医学全体の人的資源の不足から事前の訓練等ができていなかったこともあり、いわば手探りの状態で進めております。

 医師及び歯科医による検案活動は、警察官による死体見分(行政検視)に伴って実施されております。これまでの報告では、一体あたりの検視所要時間は、およそ10から15分程度と伺っております。検視を行う警察官は、全国の都道府県警察から検視チームが派遣されておりますが、そうした方々と協力し、地元の医師・歯科医師、医師会から派遣の医師・歯科医師とともに、検案を行っております。

 当初は、全例について検視及び身元確認作業を実施することは困難と考えられ、そうした手続きを踏まずに埋葬することも可とすべきではないかとの意見もありましたが、数年来の死因究明に関わる議論の中で、予め全国の検視官の増員がされていたこともあり、現在では検視・検案作業が発見される遺体の数に追い付いている状態と思われます。

 一方で、今回の震災においては、阪神大震災の際と異なり、被災地が広範囲であり、遺体の検視・検案の場所が多数存在するという特殊な状況があり、かつ、その作業は、今後長期化すると考えられております。そのような中、多くの法医学会会員が被災地の支援に駆けつけたいと考えていますが、代わりの解剖医がいないなどの理由で地元に留まらざるを得ず、遺憾に思われているかたも多くいらっしゃるとの報告も受けております。

 法医学会としては、今後も、亡くなられた方が確実にご遺族のもとへもどられますよう厚生労働省、警察庁等と協議を続けながら、検案業務の適正化、効率化等について適宜通達を出すなどし、総力を挙げて長期的にこの検案支援活動を継続する所存です。

 また、後日、このような大規模震災時の検死・検案のあり方について学会として提言していこうと考えております。例えば、死因究明制度の議論においては、犯罪見逃し防止目的のみでなく、災害に強い検視・検案体制の確立が求められていると考えております。震災のため延期にはなりましたが、厚生労働省医政局医事課も幹事として参加している警察庁における「犯罪死の見逃し防止に資する死因究明制度の在り方に関する研究会」の議論等においても法医学会として積極的に提言しようと考えております。

以上